初めての浮気2 友美さん、下の名前で呼ばせてね
- Date
- 2014/08/22/Fri 12:40
- Category
- 友美と奈津実、初めての浮気
夕方の買い物客がそろそろ増え始めた。
広田友美は、鮮魚売り場で、いろいろな切り身のパックを眺めながら、今夜の夕食のメニューを、考えている。
(うーん、いっそ、お肉にしようかなー)
まったくメニューが決まらない。
まあ、オットなんかは、どんな料理を出しても、黙って座って、黙って食べて、黙って日経の夕刊を読むだけなんだけど・・・・。
精肉売り場に目をやったとたんに、目の端を、人影が横切る。
何気なく、その人影を目で追う。
(あら)
思わず、駆け寄った。
「高野先生じゃありませんか。お久しぶり」
呼び止められた女は、えっという顔をして、足を止めた。
「あーら、お忘れかしら。無理もありませんわ。生徒の母親なんて、毎年毎年何十人も、おりますものねえ」
呼び止められた二十代後半の女は、ちょっと困った顔を、すぐにぱっと明るくした。
「ええと、ああ、・・・・広田由香里さんのおかあさん」
「そうですそうです、ムスメがお世話になりましたぁ」
「いえいえ、そんなぁ。由香里さん、いまは高二?、かしら」
「そうですそうです。えー、覚えていてくだすったんですねー。うれしー」
「いえいえ、最初は、ぼんやりしてて気づかず、すいませんでしたぁ」
「いーえいーえ。いきなり声かけられて、何年前のどの生徒の母親、なんって、あたしには、とうていむりっ。やっぱり、高野先生、頭がよいわー」
女は苦笑して、
「まあ、それが仕事ですからねー。由香里さん、中学のときからお美しかったから、いまでは、相当の美人さんでしょーねぇ」
「いーえいえ、それほどでも」
しかし、母親の顔の輝きから、自慢の娘なのがうかがえた。
「あらっ、お忙しいのに、お呼び止めして、勝手におしゃべりして、ご迷惑じゃありません?」
「いえいえ、・・・・実は、ちょっと、困ってたところですの」
「はあ」
「実は、今度学生時代のお友達を何人か呼んで、ホームパーティー?みたいなことを、することに、なっちゃいまして・・・・。でも、私、お料理なんて、ほとんどしたことないしぃ。今日は、このスーパーで下見してたところなんですよ」
「はあ、それはそれは」
若い女は、年上の人妻のひじにさりげなく触り、
「広田さんのおかあさん、もしよろしかったら、メニューとかの、相談に乗っていただけません?」
ストアインストアの喫茶コーナーに目をやり、にっこりと、微笑んだ。
人妻は、若い女の、花のようなほほえみに、これまた大輪の花のようなほほえみを返した。
友美は、微笑むと、とたんに若々しい魅力に満ちた顔になる、高野美由紀は、その人妻の笑顔に、魅入った。
高野美由紀は、細いタバコを車載の灰皿で押しつぶすと、助手席の書類かばんに、目をやった。
(今日は、遅いな。時間つぶしに、採点でもやるか)
かばんの中の小テストの束を取り出そうと上半身をかがめたとたん、フロントグラスの片隅の、目当ての家の、玄関ドアが、開いた。
美由紀はすばやく目をやり、小太りの人妻が、ドアの鍵を閉めるのを、見守った。
新しい一本を口にくわえ、ライターで着火した。
人妻は、自転車に乗り、走り出した。
広田友美の家の玄関がぎりぎり見える位置の、住宅街の路地裏に止めた軽を、美由紀は、ゆっくりと、発車した。
とろとろ走る自転車に、気づかれないよう、後方をゆっくり走る。
住宅街から、そろそろ駅前商店街に変わりかける、角のタバコ屋を曲がったとたん、人妻の自転車は、急停車した。
(うっ、やばいっ)
美由紀もぎりぎりで軽を止め、人妻を見やった。
友美は自転車を降りて、前かごの買い物バッグからケータイを取り出した。にこにこ話し始め、身振り手振りも大きく、はしゃいで着信電話に、応じている。顔を少し赤らめ、豊満なからだを、しなしなさせた。
(谷内からの電話だな)
美由紀は、中学の教え子の谷内奈津実が、いまは、そのクラスメイト広田由香里の母親と、出来ている、のを、知っている。
(あんなに、はしゃいで)
中学校の女教師は、かつて自分のクラスで受け持った谷内奈津実が、クラスメイトの母親を、存分に犯しまくっているサマを夢想して、少し、湿った。
長い長い電話を終え、ケータイをバッグにしまうと、人妻は、また自転車に、またがった。後姿から見ても、友美がうきうきしているのが、美由紀には、わかった。年下の恋人、谷内奈津実との会話が、出来うれば、知りたかった。美由紀は、獣のように小さく、うめいた。
広田友美は、駅前のスーパーの駐輪場に自転車を止め、店内に入った。
その横の、小さな駐車スペースに軽を止め、美由紀も、店内に入る。入り口でスーパーかごを手に取り、ゆっくりと店内を見渡しつつ、歩を進めた。
やがて、鮮魚コーナーにいる友美を見つけると、さりげなく人妻の前を横切った。
期待したとおり後ろから、声がかかった。
「高野先生じゃありませんか。お久しぶり」
呼び止められた美由紀は、ちょっと大げさに、えっという顔をして、足を止めた。
「あーら、お忘れかしら。無理もありませんわ。生徒の母親なんて、毎年毎年何十人も、おりますものねえ」
美由紀は、狙い済ました「獲物」が見事に引っかかったことに、顔をぱっと明るくした。
「ええと、ああ、・・・・広田由香里さんのおかあさん」
「そうですそうです、ムスメがお世話になりましたぁ」
ストアインストアの喫茶コーナーに広田友美を誘うと、
「アイスコーヒーでいいかしら」
「えっとぉ、あたしホットで」
「ええー、まだまだアツいのにー」
「ふふっ、あたし、おばさんだから」
「えー、まだまだ若いのにー。あっ。このケーキおいしそう。食べますぅ」
「いやー、一応ダイエット中なものでー」
と、いいつつ、人妻はコーヒーにどぼっと、砂糖を入れた。
「なに、言ってんですか。広田さん、ダイエットの必要ありませんよー」
また、さりげなく人妻のボディにタッチ。
「えー。おでぶちゃんですよーもー」
「そうかな、なかなかセクシーですよ広田さん」
「もーやめてー」
友美は、キャッキャッと、はしゃいだ。その様子に美由紀は目を細め、
「じゃあ、こーしません? イッコのケーキをふたりで半分こで」
「やだー」
二人はケーキを半分こに食べながら、由香里の中学時代の思い出話やら、ホームバーティーのメニューについて話し合った。
「えー、でもー。あたし、ホームパーティーなんて、そんなこじゃれたことしたことないですよー。わかんないー」愛くるしく、否定した。
「えっ、でも、たとえば、由香里さんのお誕生日会なんて、しませんでした? ほら、さつきちゃん?とか、奈津実ちゃん?とか、お誘いして・・・・」
「なつ・・・・。え、ええ、ええ、何回かしましたけれどー。でも、だいぶ昔ですし、それに子供のお誕生会と、大人のホームパーティーなんて、ぜんぜん違いますでしょう」
それからふたりは、エンエンと、おしゃべりした。
何度か、さりげなく、美由紀は、友美の豊満なからだに、ボディタッチした。友美も慣れてきて、「やだーもー」美由紀の肩をたたいた。
ある平日の休み、高野美由紀は、久しぶりに新宿二丁目のレズビアン・バーに顔を出そうと思った。に、しても、まだ午前中であり、新宿で映画でも見ようと思案していた。
特に見たい映画も考え付かなかったので、混雑する車内で吊り革につかまりつつ、映画の中吊り広告を見ていた。
(いやー。コレは渋すぎだろ。軽いコメディーか、アクションモノが、いいなあ)
渋そうな恋愛映画、しかも美由紀の大嫌いな悲恋モノの広告に顔をしかめていると、ふと視線の端に、目に、入った。
ばっちりきれいに化粧して、かわいいワンピース姿、つばの広い帽子と、軽い色のサングラスの中年女性が、目に入って、
(あ、なんか見覚え)
注視した。ケータイでメールしているようだ。
そのうち前の座席の客が降り、女性は、座った。
(あっ、広田・・・・由香里の母親?)思い出した。
その友美の前に立った、男物のアポロキャップをかぶった長身の少女。
(あっ、この子も?)
思い出した。由香里のクラスメイトの谷内奈津実だ。
でも、このふたり、当然面識はあるはず、確か幼なじみの親友と、その母親のはず?
なのに、他人みたいに知らんふり?
二人の様子をさりげなく見ていると、わかってきた。
少女がメールを打ち、にっこりすると、女性が着信して、そのメールを読み、微笑む。こんどは女性がたどたどしくメールを打ち送信すると、その前に立っている少女が着信したメールを読み、にっこりする。
なるほど。
やがて、電車が止まって、友美の隣の席が空いた。
谷内奈津実はすばやく座り、ジージャンを脱ぐとひざに、かけた。
人妻も、つば広の帽子を脱いで、ひざの上に載せる。
(あっ、このふたり)
美由紀には、わかった。少女が、ジージャンとつば広帽子の下で手を伸ばし、友美の手を握っていることが。
また、二人は、知らぬ顔でメールの送受信を繰り返している。
電車が急に止まって、美由紀も、皆なもがくんとなった。
そこで美由紀は、決定的瞬間を、目撃した。
少女は、揺れる振りして、人妻のほほにキスした!
(こ、この、ふたり、デキている!?)
かつての自分の教え子と、クラスメイトの母親が???
美由紀は、くらくらした。思わず、吊り革にすがった。
やがて電車は新宿駅に停車し、ドアが開いて、二人は降りた。
手をつないで、降りている!
美由紀は、何人か間に挟んで、二人を、追った。追わずには、いられなかった。
奈津実は友美の耳に口を近づけて、なにかささやいた。
友美は、ふふっ、と笑った。
ずうっと二人は手をつないで、歩いていた。
あとを追いつつ、興奮の余り間の数人を抜いていき、思わず美少女と、豊満な人妻のすぐ後ろにまで迫り、美由紀はあっと驚いた。
「ふふ」前を行く奈津実は、友美のほほに、チューした。
「いやん。やり過ぎ」友美はほほを染めた。
(こんな人前で、ムスメのクラスメイトにキスされて)美由紀は、興奮した。(しかも、ぜんぜん、嫌がってない!)
高野美由紀は、すらりとボーイッシュな美少女も、豊満な人妻も、どちらも、抱きたい、と思った。
やがて、人妻と少女は、映画館の中に、入っていく。美由紀もあわてて当日券を買い求め、後に続いた。売店で、飲み物をふたつとポップコーンを買っている奈津実を見つけた。トイレから出てきた友美と場内に入った。
平日の朝一回目のせいか、客席は半分も埋まっていない。
前後左右ががらがらの席を選んで、ふたり並んで座っている。
美由紀は、そのすぐ後ろ側に、音を殺して、こっそり、座った。
暗くなって予告編が始まると、少女は、友美の帽子を脱がせて自分の膝に乗せたようだ。ポップコーンをつまんで友美に食べさせている。
「おいしい?」
「うふ、おいしいよ」
耳をそば立てた美由紀には、その会話がかろうじて聞き取れる。
どうやら年下の少女のほうが、年上の人妻をリードしているようだ。美由紀は、嫉妬で、思わず、汗が、出た。
上映されているのは、アメリカン・コメディーの予告だった。
「ひでー。これ、笑えねえよ」ささやいている。
「でも、この子、かわいい。新人の子?」人妻は甘い声でささやき返した。
「あ、友美さん。女優に興味あるんだ」
「かわいいよ。なんとなく奈津実ちゃんに似てない?」
「げっ。なんだよ。似てねーよ。押し倒して、犯すぞこら」
「奈津美ちゃん下品、・・・・あっ、これ、よさそう」
次の予告が始まっていて、甘い恋愛モノだった。
ふたりは手を握っているようだ、美由紀は軽く嫉妬した。
「・・・・これ、いい。泣けそう」
「友美の好み?」
「うん」
「じゃあ、次はこれ見に来よっか」
「うん、見たい」
なんと、奈津実は友美にねっとり口づけしたようだ。
友美は素直に奈津実の口づけを受け止めている。
くちびるを離して、ふたりは微笑んだ。美由紀は、呆然としつつ、少し湿っている。
映画が終わったあと、少女は人妻を、都の施設ハイジアのほうにつないだ手を誘導した。
「えー。お店あるの」
殺伐した新宿の街の雰囲気に慣れていない友美は奈津実にすがりつく。
美由紀は、嫉妬しつつ、ふたりをあとを追った。
ぐるぐる歩いて、少しの距離しかなかったのに、歩き疲れた友美はふくれっ面をしているようだ。
「もー、お腹すいたぁ」
まるで幼い少女のように、奈津実をにらみつけた。甘えている証拠である。
「もう、ちょっと探してみよ。だめだったら、手近のラーメン屋に入るとかさ」
「もー」
なだめつつ、奈津実はつないだ手をホテル街のほうに誘導している。
「あー、なんだかエッチっぽいとこに来た」
「え、そう?」
「奈津実ちゃん、なんかたくらんでる」
奈津実はニヤニヤしている。
「友美さん、もう子供じゃないんだからさ」
「えー」
手をぎゅっと握っている!
「友美は、抱かれたくないの」
「えー」友美はもじもじした。「抱かれたいよ、友美だって」
「じゃ、しよ」
「でも。でもでも。女同士で入れないよ」
「入れる。誰にも出会わなくていいとこもあるんだって」
「でも。でも。恥ずかしいよ。あ、あの人こっち、見てる」
「大丈夫だって。ここは新宿だよ。誰も気にしないよ」
「あー、奈津実ちゃん、最初から。ひどーい」
やがて、人妻と少女は、そのうちのひとつの、ラブホに、入った。それを見届けて、美由紀はなじみのレズビアン・バーに、向かった。思わぬ光景に接して、秘所は、湿っていた。
「なんだかあ」高野美由紀は、人妻の二の腕にタッチしつつ、「広田さんのおかあさん、昔からの親友みたいー。話が合う合うー」
「キャーやだやだあ。うれしがらせないでぇ、高野センセったらー」
友美も、美由紀の肩をたたいた。豊かな肉を揺らして、くすくす笑っている。
「えー、その、高野先生って、やだなあ」
「えー、じゃ、なんて呼べばあ。うふふ」
「たとえば・・・・美由紀、さん、とか?」
「えー、娘の先生を、美由紀さん、ですかあ」キャッキャッと、笑う。
「その代わりにぃ。友美さん? 友美さんって、下の名前で呼ばせてもらって、いいかしらぁ」
「えー、そんなー、おかしいですよー、先生から友美さんなんてぇー」
「そうかなー」
そのとぎ、突然、どどどうっと、音が、した。
「ひゃっ、イマの音、なにっ」友美は、びっくりした。
店内にいるもの全員が、近くの出入り口を見た。ガラス越しに、いきなりの大雨が見えた。大量の太い雨脚が、地面にたたきつけられ、盛大に跳ね返っていた。
客の誰かが、つぶやいた。「ゲリラ豪雨?」
「やーもー、帰れないわー」友美は、顔をしかめた。
「友美さん、歩き?」
「ううん、ママチャリ」
「じゃあ、あたし、車で来たから、送っていくわ、友美さんのこと」
高野美由紀は、テーブルの上の広田友美の、丸々した手のひらに、自分の手のひらを、重ねた。うるおいのある、さわり心地のいい手だった。
(つづく)

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広田友美は、鮮魚売り場で、いろいろな切り身のパックを眺めながら、今夜の夕食のメニューを、考えている。
(うーん、いっそ、お肉にしようかなー)
まったくメニューが決まらない。
まあ、オットなんかは、どんな料理を出しても、黙って座って、黙って食べて、黙って日経の夕刊を読むだけなんだけど・・・・。
精肉売り場に目をやったとたんに、目の端を、人影が横切る。
何気なく、その人影を目で追う。
(あら)
思わず、駆け寄った。
「高野先生じゃありませんか。お久しぶり」
呼び止められた女は、えっという顔をして、足を止めた。
「あーら、お忘れかしら。無理もありませんわ。生徒の母親なんて、毎年毎年何十人も、おりますものねえ」
呼び止められた二十代後半の女は、ちょっと困った顔を、すぐにぱっと明るくした。
「ええと、ああ、・・・・広田由香里さんのおかあさん」
「そうですそうです、ムスメがお世話になりましたぁ」
「いえいえ、そんなぁ。由香里さん、いまは高二?、かしら」
「そうですそうです。えー、覚えていてくだすったんですねー。うれしー」
「いえいえ、最初は、ぼんやりしてて気づかず、すいませんでしたぁ」
「いーえいーえ。いきなり声かけられて、何年前のどの生徒の母親、なんって、あたしには、とうていむりっ。やっぱり、高野先生、頭がよいわー」
女は苦笑して、
「まあ、それが仕事ですからねー。由香里さん、中学のときからお美しかったから、いまでは、相当の美人さんでしょーねぇ」
「いーえいえ、それほどでも」
しかし、母親の顔の輝きから、自慢の娘なのがうかがえた。
「あらっ、お忙しいのに、お呼び止めして、勝手におしゃべりして、ご迷惑じゃありません?」
「いえいえ、・・・・実は、ちょっと、困ってたところですの」
「はあ」
「実は、今度学生時代のお友達を何人か呼んで、ホームパーティー?みたいなことを、することに、なっちゃいまして・・・・。でも、私、お料理なんて、ほとんどしたことないしぃ。今日は、このスーパーで下見してたところなんですよ」
「はあ、それはそれは」
若い女は、年上の人妻のひじにさりげなく触り、
「広田さんのおかあさん、もしよろしかったら、メニューとかの、相談に乗っていただけません?」
ストアインストアの喫茶コーナーに目をやり、にっこりと、微笑んだ。
人妻は、若い女の、花のようなほほえみに、これまた大輪の花のようなほほえみを返した。
友美は、微笑むと、とたんに若々しい魅力に満ちた顔になる、高野美由紀は、その人妻の笑顔に、魅入った。
高野美由紀は、細いタバコを車載の灰皿で押しつぶすと、助手席の書類かばんに、目をやった。
(今日は、遅いな。時間つぶしに、採点でもやるか)
かばんの中の小テストの束を取り出そうと上半身をかがめたとたん、フロントグラスの片隅の、目当ての家の、玄関ドアが、開いた。
美由紀はすばやく目をやり、小太りの人妻が、ドアの鍵を閉めるのを、見守った。
新しい一本を口にくわえ、ライターで着火した。
人妻は、自転車に乗り、走り出した。
広田友美の家の玄関がぎりぎり見える位置の、住宅街の路地裏に止めた軽を、美由紀は、ゆっくりと、発車した。
とろとろ走る自転車に、気づかれないよう、後方をゆっくり走る。
住宅街から、そろそろ駅前商店街に変わりかける、角のタバコ屋を曲がったとたん、人妻の自転車は、急停車した。
(うっ、やばいっ)
美由紀もぎりぎりで軽を止め、人妻を見やった。
友美は自転車を降りて、前かごの買い物バッグからケータイを取り出した。にこにこ話し始め、身振り手振りも大きく、はしゃいで着信電話に、応じている。顔を少し赤らめ、豊満なからだを、しなしなさせた。
(谷内からの電話だな)
美由紀は、中学の教え子の谷内奈津実が、いまは、そのクラスメイト広田由香里の母親と、出来ている、のを、知っている。
(あんなに、はしゃいで)
中学校の女教師は、かつて自分のクラスで受け持った谷内奈津実が、クラスメイトの母親を、存分に犯しまくっているサマを夢想して、少し、湿った。
長い長い電話を終え、ケータイをバッグにしまうと、人妻は、また自転車に、またがった。後姿から見ても、友美がうきうきしているのが、美由紀には、わかった。年下の恋人、谷内奈津実との会話が、出来うれば、知りたかった。美由紀は、獣のように小さく、うめいた。
広田友美は、駅前のスーパーの駐輪場に自転車を止め、店内に入った。
その横の、小さな駐車スペースに軽を止め、美由紀も、店内に入る。入り口でスーパーかごを手に取り、ゆっくりと店内を見渡しつつ、歩を進めた。
やがて、鮮魚コーナーにいる友美を見つけると、さりげなく人妻の前を横切った。
期待したとおり後ろから、声がかかった。
「高野先生じゃありませんか。お久しぶり」
呼び止められた美由紀は、ちょっと大げさに、えっという顔をして、足を止めた。
「あーら、お忘れかしら。無理もありませんわ。生徒の母親なんて、毎年毎年何十人も、おりますものねえ」
美由紀は、狙い済ました「獲物」が見事に引っかかったことに、顔をぱっと明るくした。
「ええと、ああ、・・・・広田由香里さんのおかあさん」
「そうですそうです、ムスメがお世話になりましたぁ」
ストアインストアの喫茶コーナーに広田友美を誘うと、
「アイスコーヒーでいいかしら」
「えっとぉ、あたしホットで」
「ええー、まだまだアツいのにー」
「ふふっ、あたし、おばさんだから」
「えー、まだまだ若いのにー。あっ。このケーキおいしそう。食べますぅ」
「いやー、一応ダイエット中なものでー」
と、いいつつ、人妻はコーヒーにどぼっと、砂糖を入れた。
「なに、言ってんですか。広田さん、ダイエットの必要ありませんよー」
また、さりげなく人妻のボディにタッチ。
「えー。おでぶちゃんですよーもー」
「そうかな、なかなかセクシーですよ広田さん」
「もーやめてー」
友美は、キャッキャッと、はしゃいだ。その様子に美由紀は目を細め、
「じゃあ、こーしません? イッコのケーキをふたりで半分こで」
「やだー」
二人はケーキを半分こに食べながら、由香里の中学時代の思い出話やら、ホームバーティーのメニューについて話し合った。
「えー、でもー。あたし、ホームパーティーなんて、そんなこじゃれたことしたことないですよー。わかんないー」愛くるしく、否定した。
「えっ、でも、たとえば、由香里さんのお誕生日会なんて、しませんでした? ほら、さつきちゃん?とか、奈津実ちゃん?とか、お誘いして・・・・」
「なつ・・・・。え、ええ、ええ、何回かしましたけれどー。でも、だいぶ昔ですし、それに子供のお誕生会と、大人のホームパーティーなんて、ぜんぜん違いますでしょう」
それからふたりは、エンエンと、おしゃべりした。
何度か、さりげなく、美由紀は、友美の豊満なからだに、ボディタッチした。友美も慣れてきて、「やだーもー」美由紀の肩をたたいた。
ある平日の休み、高野美由紀は、久しぶりに新宿二丁目のレズビアン・バーに顔を出そうと思った。に、しても、まだ午前中であり、新宿で映画でも見ようと思案していた。
特に見たい映画も考え付かなかったので、混雑する車内で吊り革につかまりつつ、映画の中吊り広告を見ていた。
(いやー。コレは渋すぎだろ。軽いコメディーか、アクションモノが、いいなあ)
渋そうな恋愛映画、しかも美由紀の大嫌いな悲恋モノの広告に顔をしかめていると、ふと視線の端に、目に、入った。
ばっちりきれいに化粧して、かわいいワンピース姿、つばの広い帽子と、軽い色のサングラスの中年女性が、目に入って、
(あ、なんか見覚え)
注視した。ケータイでメールしているようだ。
そのうち前の座席の客が降り、女性は、座った。
(あっ、広田・・・・由香里の母親?)思い出した。
その友美の前に立った、男物のアポロキャップをかぶった長身の少女。
(あっ、この子も?)
思い出した。由香里のクラスメイトの谷内奈津実だ。
でも、このふたり、当然面識はあるはず、確か幼なじみの親友と、その母親のはず?
なのに、他人みたいに知らんふり?
二人の様子をさりげなく見ていると、わかってきた。
少女がメールを打ち、にっこりすると、女性が着信して、そのメールを読み、微笑む。こんどは女性がたどたどしくメールを打ち送信すると、その前に立っている少女が着信したメールを読み、にっこりする。
なるほど。
やがて、電車が止まって、友美の隣の席が空いた。
谷内奈津実はすばやく座り、ジージャンを脱ぐとひざに、かけた。
人妻も、つば広の帽子を脱いで、ひざの上に載せる。
(あっ、このふたり)
美由紀には、わかった。少女が、ジージャンとつば広帽子の下で手を伸ばし、友美の手を握っていることが。
また、二人は、知らぬ顔でメールの送受信を繰り返している。
電車が急に止まって、美由紀も、皆なもがくんとなった。
そこで美由紀は、決定的瞬間を、目撃した。
少女は、揺れる振りして、人妻のほほにキスした!
(こ、この、ふたり、デキている!?)
かつての自分の教え子と、クラスメイトの母親が???
美由紀は、くらくらした。思わず、吊り革にすがった。
やがて電車は新宿駅に停車し、ドアが開いて、二人は降りた。
手をつないで、降りている!
美由紀は、何人か間に挟んで、二人を、追った。追わずには、いられなかった。
奈津実は友美の耳に口を近づけて、なにかささやいた。
友美は、ふふっ、と笑った。
ずうっと二人は手をつないで、歩いていた。
あとを追いつつ、興奮の余り間の数人を抜いていき、思わず美少女と、豊満な人妻のすぐ後ろにまで迫り、美由紀はあっと驚いた。
「ふふ」前を行く奈津実は、友美のほほに、チューした。
「いやん。やり過ぎ」友美はほほを染めた。
(こんな人前で、ムスメのクラスメイトにキスされて)美由紀は、興奮した。(しかも、ぜんぜん、嫌がってない!)
高野美由紀は、すらりとボーイッシュな美少女も、豊満な人妻も、どちらも、抱きたい、と思った。
やがて、人妻と少女は、映画館の中に、入っていく。美由紀もあわてて当日券を買い求め、後に続いた。売店で、飲み物をふたつとポップコーンを買っている奈津実を見つけた。トイレから出てきた友美と場内に入った。
平日の朝一回目のせいか、客席は半分も埋まっていない。
前後左右ががらがらの席を選んで、ふたり並んで座っている。
美由紀は、そのすぐ後ろ側に、音を殺して、こっそり、座った。
暗くなって予告編が始まると、少女は、友美の帽子を脱がせて自分の膝に乗せたようだ。ポップコーンをつまんで友美に食べさせている。
「おいしい?」
「うふ、おいしいよ」
耳をそば立てた美由紀には、その会話がかろうじて聞き取れる。
どうやら年下の少女のほうが、年上の人妻をリードしているようだ。美由紀は、嫉妬で、思わず、汗が、出た。
上映されているのは、アメリカン・コメディーの予告だった。
「ひでー。これ、笑えねえよ」ささやいている。
「でも、この子、かわいい。新人の子?」人妻は甘い声でささやき返した。
「あ、友美さん。女優に興味あるんだ」
「かわいいよ。なんとなく奈津実ちゃんに似てない?」
「げっ。なんだよ。似てねーよ。押し倒して、犯すぞこら」
「奈津美ちゃん下品、・・・・あっ、これ、よさそう」
次の予告が始まっていて、甘い恋愛モノだった。
ふたりは手を握っているようだ、美由紀は軽く嫉妬した。
「・・・・これ、いい。泣けそう」
「友美の好み?」
「うん」
「じゃあ、次はこれ見に来よっか」
「うん、見たい」
なんと、奈津実は友美にねっとり口づけしたようだ。
友美は素直に奈津実の口づけを受け止めている。
くちびるを離して、ふたりは微笑んだ。美由紀は、呆然としつつ、少し湿っている。
映画が終わったあと、少女は人妻を、都の施設ハイジアのほうにつないだ手を誘導した。
「えー。お店あるの」
殺伐した新宿の街の雰囲気に慣れていない友美は奈津実にすがりつく。
美由紀は、嫉妬しつつ、ふたりをあとを追った。
ぐるぐる歩いて、少しの距離しかなかったのに、歩き疲れた友美はふくれっ面をしているようだ。
「もー、お腹すいたぁ」
まるで幼い少女のように、奈津実をにらみつけた。甘えている証拠である。
「もう、ちょっと探してみよ。だめだったら、手近のラーメン屋に入るとかさ」
「もー」
なだめつつ、奈津実はつないだ手をホテル街のほうに誘導している。
「あー、なんだかエッチっぽいとこに来た」
「え、そう?」
「奈津実ちゃん、なんかたくらんでる」
奈津実はニヤニヤしている。
「友美さん、もう子供じゃないんだからさ」
「えー」
手をぎゅっと握っている!
「友美は、抱かれたくないの」
「えー」友美はもじもじした。「抱かれたいよ、友美だって」
「じゃ、しよ」
「でも。でもでも。女同士で入れないよ」
「入れる。誰にも出会わなくていいとこもあるんだって」
「でも。でも。恥ずかしいよ。あ、あの人こっち、見てる」
「大丈夫だって。ここは新宿だよ。誰も気にしないよ」
「あー、奈津実ちゃん、最初から。ひどーい」
やがて、人妻と少女は、そのうちのひとつの、ラブホに、入った。それを見届けて、美由紀はなじみのレズビアン・バーに、向かった。思わぬ光景に接して、秘所は、湿っていた。
「なんだかあ」高野美由紀は、人妻の二の腕にタッチしつつ、「広田さんのおかあさん、昔からの親友みたいー。話が合う合うー」
「キャーやだやだあ。うれしがらせないでぇ、高野センセったらー」
友美も、美由紀の肩をたたいた。豊かな肉を揺らして、くすくす笑っている。
「えー、その、高野先生って、やだなあ」
「えー、じゃ、なんて呼べばあ。うふふ」
「たとえば・・・・美由紀、さん、とか?」
「えー、娘の先生を、美由紀さん、ですかあ」キャッキャッと、笑う。
「その代わりにぃ。友美さん? 友美さんって、下の名前で呼ばせてもらって、いいかしらぁ」
「えー、そんなー、おかしいですよー、先生から友美さんなんてぇー」
「そうかなー」
そのとぎ、突然、どどどうっと、音が、した。
「ひゃっ、イマの音、なにっ」友美は、びっくりした。
店内にいるもの全員が、近くの出入り口を見た。ガラス越しに、いきなりの大雨が見えた。大量の太い雨脚が、地面にたたきつけられ、盛大に跳ね返っていた。
客の誰かが、つぶやいた。「ゲリラ豪雨?」
「やーもー、帰れないわー」友美は、顔をしかめた。
「友美さん、歩き?」
「ううん、ママチャリ」
「じゃあ、あたし、車で来たから、送っていくわ、友美さんのこと」
高野美由紀は、テーブルの上の広田友美の、丸々した手のひらに、自分の手のひらを、重ねた。うるおいのある、さわり心地のいい手だった。
(つづく)

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